すべての人のウェルネスを願って日本で開発された、ヒーリングシステム CS60

2023/05/18

Newsletter Vol.215

三恵歯科医院の院長 森一弘先生(第1回)

今回は歯の神経治療の専門家であり、CS60デンタル(仮称)の開発にもご尽力いただいている三恵歯科医院の院長 森一弘(もりかずひろ)先生にインタビューします。

―森先生は最近『大切な歯を残そう! 根管治療のススメ』という新刊を出されたばかりです。読者のために簡単に内容を教えていただけますか?

森:私は米国で「歯内療法専門医」という資格を取得しています。
歯内療法とは、「根管治療」とも呼ばれます。むし歯が歯の神経まで進行し、ガマンできないほどの痛みの症状がある際に、その神経をきれいに取り除き、神経を取ったあとのスペース(根管)にゴム状の「ガッタパーチャ」といわれる根管充填材を詰めて塞ぐという一連のプロセスのことをいいます。
その治療の成否によって、抜歯せずに済むかどうかが決まるのです。私は、1988年から91年の3年間、コロンビア大学歯科学部に留学し、歯内療法専門医課程を学びました。そこでアメリカと日本の歯科医療にギャップがあることを知ったのです。

―どんなところにギャップがあったのでしょうか。

森:1988年当時、日本はバブル経済の真っ只中で「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われていた時代です。私自身、東京歯科大学という日本の中ではトップクラスの大学で学び、その後東京歯科大学附属市川総合病院で研鑽していたので、歯科医師として一定のレベルに達したと思っていました。自信を持って入学したのですが、ニューヨークで打ちのめされたのです。

―何が違ったのでしょうか?

森:日本との文化の違いや言葉の壁、そして何より歯科医療のレベルの違いに直面しました。
アメリカの先生方はきちんと治療の成果を出すのですが、私が行う日本式の治療ではなぜかうまくいかず、思うような結果が出ませんでした。「何が違うんだろう」と半年間くらい悩みました。

―ご著書の冒頭に「日本の歯科診療は30年くらい遅れている」と書かれていましたね。

森:当時私は日本の歯科医療が世界のトップレベルだと信じていたのですが、実は世界の最先端から取り残されつつあったのです。その厳しい現実を目の当たりにしました。「島国根性のままではダメだ」と腹を決めて、3年間の留学期間中死に物狂いで学び、臨床経験を重ねました。
大学の講義では、事前に文献を読んでディスカッションをします。英語が母国語の学生たちは講義が始まる10~15分前くらいに読んでいましたが、私は前日の夜中の2時3時まで文献を読んでから講義にのぞみました。今振り返っても人生で一番勉強していた時期です。
アメリカで臨床経験を重ねるにつれ、日本の一般歯科医師とアメリカの神経治療専門医が神経治療をしたときでは、成功率が大きく異なることに気づきました。

根管治療がきちんと行われていれば、根管の中は隙間なく充填され、外から細菌が入ってこないように歯根の穴も塞がれます。根管治療をしたのに、数カ月あるいは数年後に痛みや腫れの症状が出るということは、最初の根管治療に何らかの問題があったからなのです。
アメリカの神経治療専門医が治療をすれば、≪95%≫ぐらいの確率で歯をもたせることができますが、日本の一般歯科医師が行えば、半分にも満たない≪45%≫程の成功率なのです。

―半分以下なんですね。どうしてこんなに成功率に差がついてしまうのでしょうか?

森:本に詳しく書いてありますが、日本の歯科医療は、制度上の問題、経営上の問題、教育上の問題という3つの問題を抱えています。
日本の歯科医療の根底にあるのは国民皆保険という考え方です。「安い治療費だからやり直しになっても仕方がない」という意識が、患者さんと歯科医師の両方にあります。
一方、アメリカで根管治療を受けると歯1本で十数万円の治療費がかかります。トラブルがあればすぐに患者さんが訴訟を起こすという国民性も相まって、歯科医師も失敗がないよう細心の注意を払います。
第二に経営上の問題があります。日本の場合は予防的なことではなく、何か処置をしないと収益につながりません。日本で行われている歯科治療を簡単に説明すると、歯を削る、神経を抜く(根管治療)、歯を抜く、被せ物をするというものです。
根管治療と抜歯では、歯科医院に入ってくる診療報酬はほぼ同じ価格帯です。経営面から考えると、時間と手間をかけてリスクの高い根管治療をするより、原因を根こそぎとる抜歯のほうがコストパフォーマンスは高いという判断になります。さらに言うと、抜歯した上で自費のインプラントをすすめればより多くの収益を得られるのです。

―先生が渡米した1988年頃には、すでに日本の歯科治療は30年遅れだったのに、未だ変わっていないのでしょうか?

森:これは教育上の問題にもつながりますが、一般の歯科医師は大学で学んで、国家試験に合格して開業します。普通は「自分の治療法に間違いはない」と思うはずです。私も留学しなければ自分のしていることに疑問を持たなかったかもしれません。
特に神経治療に関しては見えない領域で、全部手先の感覚で治療するので、「これが正しい」という確信を得るのが難しいのです。
私はアメリカの大学に留学した3年間で、しっかりと患者さんを診ることができたので、良い治療と悪い治療の違いがわかるようになりました。ですから、一般の方だけではなく、歯科医師の方にも読んで気づきを与えたいと思ってこの本を書きました。

―事実を世の中に伝えるという森先生の使命は大きいですね。

(つづく)

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