今回は広島県福山市のFL、
安原伸家さんにインタビューしました。
―2021 年にインタビューさせていただいたとき、安原さんは自然体験塾「学びの未来 こだ
ま」を立ち上げたばかりでしたね。今も子どもたちの居場所づくりに力を入れているのでしょうか?
安原:2021 年に福山で施術会を開かせていただきました。そのときは休日ということもあり、子どもたちも大勢来て、西村先生のお話をかぶりつくように聞いていましたね。
参考:CS60ニュースレター 福山施術会(前編)
https://cs60.com/newsletter-vol-134/
施術体験では、本部スタッフの皆さんから CS60 の基本的な使い方を教えていただき、実際におじいちゃんやおばあちゃんに「施術」もさせていただきました。今でも「こだま」に通って来る子どもたちは、何かあると「おじちゃん、CS して!」と言って来ます。
―日常生活の中に CS60 が根付いているんですね。
安原:子どもたちは、自分が体験してできるようになったノコギリの使い方や火の起こし方などを、下の学年の子どもたちに伝えています。
CS60 についても同様に、以前から通っている子たちは、ちょっとした打撲や捻挫をした友だちがいると、「〇〇ちゃんに CS やってあげて!」と呼びに来ます。
私が手を離せないときは、子どもたちで CS の「施術」をやり合っています。
「こだま」では「CS」が共通言語になっています。
―今でもここは、子どもたちにとって秘密基地のような存在ですか?
安原:「こだま」は、主に小学生が通ってくれることを想定して立ち上げました。今は少しずつですが、就学前の子どもたちや中学生にも広がってきています。一方、学校に行くのがしんどいと感じる中高生が増えてきているようにも感じます。
今も子どもたちにとっての居場所づくりというのが根底にはあります。
でも、お父さんやお母さん世代も相当に大変そうなんですよ。
子どもたちは、お父さん、お母さん方が迎えに来られたり、活動の一端を見てもらったり、他愛無い会話をする中で自然と笑顔になります。
子どもたちにとって家族の存在は大きいなぁと感じます。
その様子を見守るうちに、「こだま」を子どもから大人まで世代を超えて集える場、心地良い場にしていきたいなぁと思うようになりました。
―子どもたちのために、大人も心地良く過ごしてほしいと思うようになったのですね。具体的にはどのようなことをされていますか?
安原:子どもたちへのアプローチだけでは限界があるなぁと感じて、「令和の辻堂プロジェクト」をスタートさせました。
「辻堂」とは、江戸時代、旧街道沿いなどに広く造られた木造の建物です。屋根はありますが壁はありません。当初は旅人の休憩場所として使われていましたが、時代の流れとともに、その地で暮らす人々の憩いの場として活用されるようになりました。
備後地方では、この「辻堂」が今もあちこちに残っていますが、慌ただしい現代では、地元の人々にも忘れ去られています。
そこで「こだまベース」をかつての「辻堂」のような場にできたらいいなぁと思っています。世代を超えて集う場に。
「壁」が無いのでちょうど良いです(笑)。
―昔は自然発生的にそういうコミュニティができたと思いますが、今は失われつつありますね。
安原:多くの子どもたちにとって、居場所は家庭と学校しかありません。
家族や学校の先生以外の大人と出会う機会も少ない。
学校の先生たちは経験が足りなかったり忙しかったりで、一人ひとりの内面まで慮ることが難しくなっています。
お父さん、お母さんも一生懸命で心身共に余裕がない。
子どもはお母さんが帰って来たら今日 1 日あった出来事を聞いてもらいたい。
「今日、こんな嬉しいことがあったよ!」と話したくて待っているのに、いざ帰って来たら「宿題やったの?」とか、「洗濯物入れてないじゃない!何してたの?」とか言われたりするわけです(笑)。
―核家族化でコミュニケーションが足りていない分、「こだま」や「辻堂」で様々な人々との関わりを増やしていきたいのですね。
安原:全ての問題を解決することはできないかもしれません。でも、かつての辻堂のような場が活性化することで、地域のコミュニティも生まれ変わると思います。
多様な繋がりが生まれることで、心の豊かさも育まれるのではないかと期待しています。
(おわり)